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(2019/02/15)

タイの主な事業形態


CHAPTER I.     事業形態
CHAPTER II.    非公開有限会社 (Private Limited Companies)   

 

 
CHAPTER I.    事業形態
国外者からタイに直接投資をする際の一般的な事業形態は以下の通りになります。
1.  有限会社 (Limited Companies)
  1.1.    非公開有限会社 (Private Limited Companies)
  1.2.    公開有限会社 (Public Limited Companies)
2.  支店 (Branches) 
3.  駐在員事務所 (Representative Offices)
4.  地域事務所 (Regional Office)
5.  パートナーシップ (Partnerships) 
  5.1. 非登録普通パートナーシップ (Unregistered Ordinary Partnerships)
  5.2. 登録普通パートナーシップ (Registered Ordinary Partnerships)
  5.3. 有限パートナーシップ(Limited Partnerships)
6.  ジョイントベンチャー (Joint Ventures)
7.  コンソーシアム (Consortiums)

 

上記の中でも非公開有限会社 (Private Limited Company)の形態が最も一般的に採用される形態です。


1. 有限会社 (LIMITED COMPANIES)


1.1. 非公開有限会社(PRIVATE LIMITED COMPANIES)
タイ進出に当たって一般的な事業形態は「非公開株式会社」です。これはいわば独自に出資するか、私募によって少人数で出資を受ける普通の会社形態になります。特徴として、会社名に「Public」と言う言葉が無く、会社名が「…Co., Ltd.」もしくは「 Ltd.」で終わる場合、その会社は非公開株式会社であると考えて差支えません。(「…Co., Ltd.」と「 Ltd.」の間には得に法的な区別はありません。) 非公開株式会社についての詳細は別の章で敷衍します。

1.2. 公開有限会社(PUBLIC LIMITED COMPANIES)
概略
公開有限会社とはその株式を公に売却をすることを目的として設立された会社を指します。(公開有限会社法、第15条) 公開有限会社は新規設立または、既存の非公開有限会社の公開有限会社への変換により設立することができます。公開有限会社の名前には「ボリサート」(「会社」と言う意味)を含み、「ジャムカット・マハチョン」(「有限公開」と言う意味)で終わるか、もしくは「ボー・モー・ジョー」(「ボリサート・マハチョン・ジャムカット」の省略)で始まる必要があります。公開有限会社の株式は必ずしもタイ証券取引所 (Stock Exchange of Thailand = “SET”) 上で取引されているとは限りません。

 

根拠法
公開株式会社という概念自体を認識する根拠法は「公開株式会社法(1992年)」およびその修正法になります。現在二つの修正法が出ています。すなわち、「公開株式会社法 No. 2(2001年)」「公開株式会社法 No. 3(2008年)」が当該修正法になります。

 

発起人および株主の数
公開有限会社を設立登記する際、15人以上の発起人(自然人のみ)が必要であり、このうち半数以上はタイの在住者でなければなりません。一方、非公開有限会社を公開有限会社に変更する場合、基本定款の再登記自体が無いためこのような要件はありません。
公開有限会社は常時15名(個人、法人を問わず)以上の株主を有する事が必要です。株主数が15名を下回った場合、その公開有限会社の株式の少なくとも10%以上を保有する株主は、裁判所に当該公開有限会社の解散命令を請求することができます。

 

株式
公開有限会社は二分類(例:普通株式および種類株式)の株式を発行することができます。公開有限会社は原則的に自社株式(金庫株)を持つことが認められません。例外とし、例えば株主総会決議事項に反対する株主から買い取る場合、または財務管理目的で株式を現存の株主から会社に過度の経済的な負担を掛けない範囲内で買い取る場合等が認められます。
原則的に、債権の株式化(Debt to equity swap)は認められません。ただし、省規則 に準拠する債務再編計画の一環であり、株主に承認を受けた場合、債券の株式化は可能となります。
株式分割制度はタイにはありません。

 

取締役
公開有限会社は五名以上の取締役を設置し、その半数以上はタイに居住している必要があります。取締役は外国人のみ、タイ人のみ、もしくはタイ人および外国人の組み合わせが認められます。株主が取締役に就任することを禁止する法律等はありません。取締役の内、署名権を有さない取締役を任命することが可能となります。(この場合、署名権を有する取締役およびそれを有さない取締役の組み合わせになります。)取締役会には取締役自身が出席する必要があり、代理人の参加、電話会議、ビデオ会議および持ち回り決議(ペーパーミーティング)等は認められていません。

 

資本金
公開株式会社法上、公開株式会社の最低登録資本金額は設定されていません。ただし、会社の資本が過半数外国資本の場合、外国事業法の規定により最低資本金額は2百万バーツ以上が必要であり、同法上、当局より許可が必要な規制対象業種の場合最低資本金額は3百万バーツになります。
公開有限会社法上、その株式の最低額面価格は設定されていません 。ただし、全ての株の額面は同額である必要はあります。株主は自身が応募した株式に対しては一括でその資本金を払い込む必要があります。株式の応募者が額面価格より高い金額を払い込んだ場合、額面を超える部分(プレミアム)については準備金として確保されることとなります。当該準備金(プレミアム)は法定準備金に充当することは認められません。法定準備金は未処分利益から配賦することとなります。

 

有限責任
株主が負うリスクの範囲は原則的に応募した株式の合計金額までになります。株主が資本金を一括で払い込まなかった場合、未払い相当金額についてその株主は債務を追い続けることとなります。

 

法定監査
公開有限会社は公認会計士による監査を受ける必要があります。タイ国証券取引場(SET)に上場している会社はより多くの報告義務が課せられています。

 

税務
公開有限会社は法人税の対象となります。タイには連結納税制度はありません。公開株式会社の法人税率は原則的には課税対象純利益の20%になります。

 


2.  支店 (BRANCH)
概略
外国(日本等)の法律に基づいて設立されている会社(日本等の会社)はタイで支店を開くことができます。本店と支店は同一の法人であるため、原則的に支店が取った行為は本店が取ったことと同然であり、本店は支店の責任を負うこととなります。支店は本店と同一の法人であり、外国法人として扱われます。駐在員事務所と異なり、原則的に支店は所得を得る業務に携わることは禁止されていません。

 

登記および許認可
外国法人のタイにおける支店の設立登記手続きは存在しません。(外国症状認識されている法人であるため。)しかし、以下を含むその他登録・届け出義務はあります。
•    納税者番号の取得:税務上の登録をし、法人税納税者番号を取得する必要があります。
•    外国人事業免許:支店の事業が外国人事業法上外国人に禁止・規制される業種に該当する場合、外国人事業免許(ライセンス)を取得する必要があります。
•    商業登録証書:外国人事業免許が不要な場合、届け出をすることにより商業登録証書を取得する必要があります。
•    その他免許:外国人事業法上の他の特定法上(例:銀行業関連法)事業の運営が規制されている場合該当するライセンス(免許)をその業種を管轄する行政機関より取得する必要があります。

 

最少資本
外国人事業免許が必要な場合、最低3百万バーツを本店より一定期間内に受領する必要があります。外国人事業免許を必要としない場合、2百万バーツになります。

 

税務
支店は、税務上はあたかも独立した法人のように課税対象となります。すなわち、原則的に本店とは切り離した形で支店の課税対象純利益がタイの法人税の対象となります。一般的なタイの法人と同様、支店も毎年公認会計士による法定監査を受ける必要があります。

 


3.  駐在員事務所 (REPRESENTATIVE OFFICES)
駐在員事務所とは、タイの商務省より指定された5項目の業務が認められた外国法人(以下、「本社」)のタイにおける事務所です。駐在員事務所は支店と同様、本店と同一法人であり、タイ法上、法人格を有さず法人格自体を認識する設立登記手続きは存在しません。

 

基本的要件
駐在員事務所の基本的な条件は以下の通りになります。
•    収入・売り上げを得ないこと。(駐在員事務所は原則的に所得が発生してはなりませんが銀行口座の預金についた利息収入等の例外は認められます。)
•    本店の事業を行わないこと。(本店の売り上げにつながるタイの顧客との交渉等をした場合、本店の売り上げは税務上の恒久的施設に源泉する所得となりこれをタイで申告納税の対象となり得るため注意を要します。)
•    製品の販売、またはサービスを提供(オファー)しないこと。
•    本社のためにビジネスのネゴシエーションをしないこと。
•    駐在員事務所の全費用を本店が負担すること。
•    法人税が生じないこと。(ただし、本店からの送金は通常駐在員事務所がタイで開く銀行口座に入るが、この現金に利息がついてしまい、益金が生じることは認められる。)

 

適格業務
駐在員事務所に認められる活動内容は以下の五項目に限定されています。
1.    本店もしくは関連会社のための物品またはサービスの供給元の発掘
2.    本店もしくは関連会社がタイ国内者より購入もしくは注文した商品の数量及び品質の検査及び品質管理
3.    本店もしくは関連会社が代理人もしくは消費者へ販売した商品に対する説明
4.    本店もしくは関連会社の新製品または新サービスの紹介または説明
5.    タイ国のビジネス状況の本店もしくは関連会社への報告

 

禁止業務
駐在員事務所は所得(売り上げ)を得る業務に携わってはならず、禁止されている業務・活動には以下が含まれます。
1.    商品調達: 本社もしくは関連者に代わっての商品の注文及び商品代金の支払いを行なってはなりません。
2.    商品の発送:本社または関連者の製品を発送してはなりません。
3.    第三者のための検品業務: 本社もしくは関連者以外の第三者のために、タイの会社により販売される製品の検品等をしてはなりません。
4.    アフターサービスの提供: 据え付け及びメンテナンスに係るサービスの提供をしてはなりません。
5.    本社もしくは関連者以外の製品に関する情報を提供してはなりません。
6.    本社もしくは関連者に代わって商品もしくはサービスの受注をしてはなりません。
7.    本社もしくは関連者に代わって仕入れ及び販売の調整(コーディネーション)をしてはなりません。
8.    既にタイにおいて販売されている製品またはサービスの宣伝及び情報提供をしてはなりません。
9.    タイの顧客と、本社もしくは関連者の間の仲介役または代理人になってはなりません。
10.    本社もしくは関連者に代わって他の会社等と事業計画の立案や調整をしてはなりません。
11.    本社もしくは関連者に代わっていかなる契約を締結してはなりません。
12.    本店もしくは関係会社では無い会社等に対し報告または情報提供をしてはなりません。

 

登記、免許、届け出等
駐在員事務所は外国法に基づき設立された本店の事務所であるため、駐在員事務所の法人格自体を認識する設立登記手続は存在しません。2017年6月9日の省令第3号 により外国人は、駐在員事務所の業務をタイで遂行するに当たり、は外国人事業免許(ライセンス)を取得する必要は無くなました。しかし、駐在員事務所を設置するに当たって商務省への届け出をし、商業登録番号を受領する必要があります。また、結果的に納税することは無くとも納税者としての登録をする必要もあります。

 

必要最低資金
駐在員事務所は本社より一定期間内に最低2百万バーツも資本を受け取る必要があります。

 

税務及び監査
駐在員事務所は普通の会社と同様に法人税の申告義務および法定監査を受ける必要があります。駐在員事務所は普通の会社と同様に駐在員事務所を運営するための資金は本社が提供する必要があります。ただし、駐在員事務所にとって当該資金は益金とはなりません。駐在員は自身の駐在員事務所より受領した給与等の個人所得税の申告義務を負います。

 

労働許可(ワークパーミット)
一般的に、外国人一人がワークパーミットを取得するためにはタイ人4人を雇用する必要があります。しかし、駐在員事務所の場合、原則的に、ワークパーミット一人分につき、タイ人の雇用は一人で済みます。原則的に駐在員2名分のワークパーミットしか発給されません。

 


4.  地域事務所 (REGIONAL OFFICE)
地域事務所とは、支店及び駐在員事務所と同様に、指定された業務に限定された海外法人のタイ事務所になります。関連する根拠法・通達等に以下が含まれます。
•    Rules of the Prime Minister’s Office on Establishment of Visa and Work Permit Service Center B.E. 2540 (1997)
•    Regulations of the Prime Minister’s Office, 24 March 2535 (1992);
•    Regulations of the Prime Minister’s Office, 25 April 2529 (1986);

 

基本的要件
•    営利目的の業務に携わらないこと。
•    同地域に本店の支店もしくは関係会社が、地域事務所の他に、少なくとも一つあること。
•    責任者はタイに居住していること。

 

適格業務
地域事務所に認められる業務は以下の7項目に限定されています。
(i)    本店に代わって同じ地域にある子会社、支店等の管理に関わる連絡又は調整業務;
(ii)    コンサルティング及び管理サービス;
(iii)    研修及び人材開発;
(iv)    財務管理
(v)    マーケティング及び販売促進計画の管理;
(vi)    商品開発
(vii)    研究開発サービス

 

登記、免許、届け出等
地域事務所は外国法に基づき設立された本店の事務所であるため、地域事務所の法人格自体を認識する設立登記手続は存在しません。2017年6月9日の省令第3号 により外国人は地域事務所の業務に携わるための外国人事業免許(ライセンス)を取得する必要は無くなりました。しかし、地域事務所の設置に当たって商務省への届け出は必要です。当該届け出により登録番号が与えられます。また、結果的に納税することは無くとも納税者としての登録をする必要もあります。

 


5.  パートナーシップ(組合)(PARTNERSHIPS)
概略
パートナーシップを組織する契約とは2名以上の者が、その事業より発生する利益を当事者間で分配することを前提に、共同事業を行うことに同意する契約である。(民商法典、第1012条)
パートナーシップの大きな特徴として、その構成員であるパートナーの各々は他のパートナーがそのパートナーシップの通常の業務の一環として取った行為に縛られ、その運営上発生した義務を全うする責任を共同的にまた無限に負う点にあります。(民商法典、第1050条参照)ただし、原則的に、有限パートナーシップの有限パートナーは出資額を失うリスクしか負うことは無く、その他個人的な財産まで及ぶ無限責任を負うことはありません。


タイにおいては以下の三種類のパートナーシップがあります。
(5.1.)  非登録普通パートナーシップ (Unregistered Ordinary Partnerships)
(5.2.)  登録普通パートナーシップ (Registered Ordinary Partnerships)
(5.3.)  有限パートナーシップ (Limited Partnerships)


(5.1)     非登録普通パートナーシップ (Unregistered Ordinary Partnerships)
概略
非登録普通パートナーシップとは、その名の通り、当局への登記をしていないパートナーシップで、契約上の関係より生ずる組織です。非登録普通パートナーシップは独立した法人格を有さないため第三者を訴えること、および第三者から訴えられることができません。(裁判等の当事者はパートナー個人個人になります。)

 

責任範囲
非登録普通パートナーシップのパートナー(構成員)は、他の構成員が通常のビジネスの一環として取った行為に対し、連帯して無限責任を負います。債権者はどのパートナー個人に対してでも債務履行を請求することができます。非登録普通パートナーシップから脱退したパートナーは、脱退後も引き続き脱退前に発生した債務に対し責任を負い続けます。新規に参加するパートナーは参加前に生じた債務に対しても責任を負います。

 

税務
非登録普通パートナーシップはあたかも自然人のように、パートナー個人とは別途課税対象となる税務主体(ユニット)であります。従い、非登録普通パートナシップは個人所得税の対象となります。パートナー個人が受け取ったパートナーシップの利益の分配はそれを受領したパートナーの課税対象所得にはなりません。(つまり二重課税は無いとも言えます。)個人所得税の税率は累進して高くなりますが、非登録普通パートナーシップに適用する税率はパートナー個人がどの税率の枠に入っているかに関わらず、最低の税枠から始まって累進税率が適用されます。尚、パートナーが個人所得税を計算するに当たって、非登録普通パートナーシップが取った個人所得税控除項目をまた別途費用として損金として取り扱うことができます。つまり、同一の個人所得税控除項目を二度取ることができ、この点は税務上のメリットだと言えます。

 

最低投資額
民商法典上は非登録普通パートナーシップを形成するためには特に最低投資額は決められていません。ただし、日本人を含む外国人が参加する場合、外国事業法等の法律により一定の投資が必要になります。

 


(5.2)  登録普通パートナーシップ (Registered Ordinary Partnerships)
概略
登録普通パートナーシップは商務省で登録することによって生ずる法人です。従い、登録普通パートナーシップは第三者と契約をすることができ、他者を訴えること、又は訴えられることが可能です。登録普通パートナーシップの概念の根拠は民商法典、第22編、「パートナーシップおよび会社」になります。

 

責任範囲
登録普通パートナーシップに参加するパートナー(構成員)は、原則的に無限責任を負います。登録普通パートナーシップが債務不履行を起こした場合、債権者はその登録普通パートナーシップもしくはそれに参加する何れのパートナーに対してでも請求をすることができます。

 

税務
登録普通パートナーシップは法人税の対象となります。登録普通パートナーシップの分配を受けたパートナーはその分配を個人所得税上、所得として申告する必要があり、課税対象をなります。従い、パートナーシップで生ずる利益は二段階で課税されると言えます。

 

法定監査
原則的に登録普通パートナーシップは公認会計士より毎年監査を受ける義務があります。

 

最低投資額
民商法典上、登録普通パートナーシップを登記するにあたって、最低投資額は規定されていません。ただし、日本人を含む外国人が参加する場合、外国事業法等の法律により一定の投資が必要になる場合が十分考えられます。


(5.3)     有限パートナーシップ (Limited Partnerships)
概要
有限パートナーシップは商務省登記することによって生まれる法人です。従い、それに参加するパートナーとは別の人格を有することとなり、第三者と契約をすることができ、他者を訴えること、又は訴えられることが可能です。有限パートナーシップの特徴は一名以上の無限責任パートナー、かつ一名以上の有限責任パートナーがいる点にあります。有限パートナーは原則的に出資額を失うリスクしか負うことは無く、その他個人的な財産まで及ぶ無限責任を負うことはありません。有限責任パートナーが経営に参画した場合、その者は無限責任パートナーと同様に無限責任を負うこととなります。有限パートナーシップの主な根拠法は民商法典、第1077条から第1095条になります。

 

税務
有限パートナーシップは法人税の対象となります。有限パートナーシップの分配を受けたパートナーはその分配を個人所得税上、所得として申告する必要があり、課税対象をなります。従い、パートナーシップで生ずる利益は二段階で課税されると言えます。

 

法定監査
原則的に有限パートナーシップは公認会計士より毎年監査を受ける義務があります。

 

最低投資額
民商法典上、有限パートナーシップを登記するにあたって、最低投資額は規定されていません。ただし、日本人を含む外国人が参加する場合、外国事業法等の法律により一定の投資が必要になる場合が十分考えられます。

 


6. ジョイントベンチャー (JOINT VENTURE)
 JVとは、二者以上が契約上、共同で利潤の追求をする事業を指します。JVは法人格を有しませんが税務上、課税対象ユニットとなり普通の会社と同様に取り扱われます。つまりJVは法人税の申告納税等をする必要があります。

 


7. コンソーシアム (CONSORTIUM)
コンソーシアムとは2社以上の会社から構成せれる契約上の関係です。民商法典上および税法上の定義は無いためあえて定義するとなれば「JVとはならない組織または関係」であると言えます。税法上JVとならない場合、コンソーシアムは課税対象の主体とはならず、構成員はそれぞれ各自で会計を管理し、税金の申告納税をすることとなります。

 

 


CHAPTER II.    非公開有限会社 (Private Limited Companies)
タイ進出に当たっての最も一般的な事業形態は非公開有限会社(以降、「有限会社」と言う)になります。会社名の末尾が「….Co., Ltd.」または「Ltd.」で終わり、その会社がタイ法上設立登記されているものであればそれは有限会社であると考えて良いと言えます。(一方、会社名に「Public Company Limited」、「PCL」、または「Mahachon」と言った言葉で含まれている場合、それは有限会社ではなく公開株式会社であると考えて良い。)有限会社の設立登記手続の概略については添付の「APPENDIX II」を参照して下さい。 有限会社は法人格を有し、その株主とは別の法人格を有します。有限会社が法的に認識される根拠法はタイの民商法典になります。実際の設立登記は商務省の事業推進局 で行います。 


発起人数および株主数
有限会社の発起人および株主の最低人数はそれぞれ3名になり、株主数はいかなる時も3名を下回ってはなりません 。

 

最低資本金額
民商法典上、有限会社の株式の額面は5バーツを下回ってはなりません。株主数の最低人数は3名であるため、理論上、最低資本金額は15バーツになりますが、商務省事業推進局の担当官には一定の裁量があるため、事業の目的を鑑みた場合、その資本金額が極端に少ない場合、その設立登記申請を却下することが考えられます。(タイ人が零細の会社を登記する場合、常識的な最低資本金額は10万~15万バーツ程度だと思われます 。)一方、外国人事業法上、外国人が株式の過半数を保有する場合、その会社の資本金額は、最低2百万バーツ必要となります。ただし、同法上の規制対象事業の場合(ネガティブリストに載っている場合)その会社の資本金は最低3百万バーツが必要となります。

 

株主及び株式
原則的に有限会社の株主が、有限会社の債務に関連して責任を負う範囲は、株主が応募した資本金額までになります。従い、応募した株式に対し、全額を払い込んだ場合、それを失うリスク以上は、原則的に負うことはありません。一方、株主自身が応募した株式に対し、全額を払い込んでいない場合(最低で25%の払い込みで良いため )、その未払分に対し支払い責任を負い続けます。有限会社は種類株を発行することが認められます。従い、普通株と種類株の二つの分類の株式を発行することが可能です。一方の分類の株式をもう一方の分類に変更することは認められません。(普通株を優先株に変更すること、およびその逆もできません。)有限会社の場合、公開株式会社と異なり、登録資本金の全額に対応し株が設定され、全株に対し応募者がいて、全株式が発行されなければなりません 。従い、日本で言う授権資本制度と同様な制度はここではありません。

 

株式譲渡: 原則的に株主は保有する株式を他者に対し自由に譲渡(売却)をすることが出来ます。ただし、会社の付属定款 上、条件が設けられている場合(例:全株主の同意を必要とする)、原則的にその条件は有効になります 。株式を譲渡するためには民商法典上規定されている要件を満たす譲渡書(「Share Transfer Instrument」)を譲渡者と譲受者の間で交わす必要があります 。又、会社の株主名簿にも譲渡の記録が記載される必要があります。
 

金庫株 :有限会社は自社の株式を保有してはならない ため、金庫株を有することは認められません。
 

株式分割:株は分割することが認められない ため、株式分割はできません。
債務の株式化(Debt to Equity Swap): 有限会社の債権者はその債権を当該会社の資本の払込みに代替することはできません 。換言すれば、いわゆるデットエクイティスワップ(Debt to Equity Swap)の制度はありません。

 

第三者割当増資:有限会社が増資する際、新株は第三者に対して割り当てることは認められません。増資の際は、まず既存の株主に対し、保有する株式数の割合に基づき募集する必要があります 。募集通知に引き受けの意思の確認の期限が示されなければならないが、当該期日までに株主が拒否するか、返答が無い場合、取締役は他の株主に売るか、自ら引き受けることができます 。ただし、付属定款にこれと異なる旨が示されている場合、原則的にその内容に従う必要があります。
 

株券発行義務: 株券は各株主に引き渡されなければなりません 。
 

取締役・取締役会
人数: 取締役の必要最低人数は一人になります。取締役の人数には上限は特に無く理論上何人でも可能です。

 

署名権の有無: 取締役は署名権を有する者とこれを有さない者の二通りに分かれます。この根拠は民商法典第1111条の(6)及び商務省登記関係文書類にあります。民商法典の当該条文は、取締役が個別に行為を取ることができる場合その権限の範囲及び会社を縛ることのできる取締役の名前と人数を登記すことを求めています 。会社登記後も会社を代表して署名をする権限を有する取締役を変更することは出来ます。
商務省が発行する会社登記 (Affidavit) に署名権を有する取締役の名前、及び有効な署名方法が記載されています。(例:「取締役A氏及び取締役B氏の共同署名、及び社印の押印がある場合署名は有効となる」)
署名権を付与されていない取締役が会社を代表する形で第三者との契約に署名をした場合でも(取締役が付与されている権限を超える行為を取ったとしても)会社はその行為に縛られる場合がある ため注意を要します。
会社と取締役の関係: 取締役と会社の関係は、民商法典の定める代理人と本人の間と同等の関係にあり 、取締役会は会社運営をするため の意思決定機関になります。

 

国籍: どの国籍の自然人でも、取締役に就任することができます。但し、特定法により代表取締役はタイ人のみに限定される場合もあります。{例:「観光事業およびツアーガイド法(2008年)」} 取締役はタイに居住する必要はありません。
 

在任期間: 原則的に毎年の最初の定時株主総会において三分の一の取締役は退任されなければなりません。取締役が三分の一に分割できない場合、三分の一に最も近い数の取締役が退任されることとなります。  当該取締役の入れ替わりは通常「取締役のローテーション」と呼びます。取締役の継続的な再任は禁止されていません。取締役が任期切れの他の事由で取締役会に欠員が生じた場合、取締役会は新たに代替の取締役を選任することができるが、その取締役の任期は退任した取締役の残りの任期のみに限られます 。
 

取締役会の招集: 取締役はいつでも取締役会を召集することができます 。取締役会は、株主総会を異なり、その招集に係る形式は得に定められてはいません。例えば、招集の事前の新聞広告や招待状の送付は民商法典上要求されていません。Eメールや電話で招集を掛けることは禁止されていません。ただし、付属定款上何らかの手続きが規定されている場合、それに従う必要があり、従わなかった場合、取締役会の効果に対し無効請求が生ずる可能性があります。
 

ペーパーミーティング等: 前述の通り、取締役会の招集については細かな規定は無いものの、取締役会は物理的な実態をともなう必要があります。従い、ペーパーミーティング(持ち回り決議)、電話会議、ストリーミング ビデオ会議等は無効となります。
 

議長: 取締役会は取締役会の議長を選任することができます。取締役会の議長はたとえ株主で無くとも株主総会の議長となります 。
株主総会に当該議長が現れない場合、出席している株主を議長として選任することができます 。不在においては取締役会および株主総会を進行させてはなりません。議長が作成した取締役会議事録および株主総会議事録の内容は正しいと推定されます。
定足数、投票および決定票: 付属定款に特段の規定が無い限り、取締役会は取締役会を成立させるために必要な出席者の最低人数(定足数)を決めることができます 。付属定款に定足数の定めは無く、この取締役会による定めも無い場合、定足数は(取締役数が3人以上いる場合)3名となります。取締役会の決議は出席者の多数決により決まり、票数が同数の場合、議長は当初の投票に加え、もう一つの票、すなわち決定票を投じることができます 。


取締役会議事録の登記: 取締役会議事録は商務省に提出する必要はありません。


株主総会
会社登記日から6ヶ月以内に株主総会を開き、その後は12ヶ月毎に少なくとも一回開くことが義務付けられています 。そのような総会を定時株主総会と呼びます 。(通称、「AGM」 ) その他の株主総会は臨時株主総会(通称、「EGM 」)と法律上、呼びます。EGMは必要に応じて招集・開催されるものです。
招集通知要件: 法的に有効な株主総会を開くためには法定の招集手続きを踏む必要があります。株主総会の招集の通知は総会開催日の少なくとも7日前(特別決議事項がある場合は最低14日前)に地元の新聞上公告をし、かつ開催日の少なくとも7日前に登録郵便(Registered mail)で株主全員に郵送する必要があります 。当該通知には、総会の開催地、開催日、開催時間、総会の議題についての詳細も明記されていなければなりません。特別決議事項がある場合、上記事前通知期間は少なくとも14日間となり、通知に特別決議案の内容についても明記する必要があります。

 

一般的な決議内容(AGMの場合): 毎年のAGMの議題は、通常以下の通りになります。
•    取締役の人数および報酬について 
•    取締役会の3分の1のローテーションについて 
•    監査済財務諸表の承認について 
•    取締役による審査対象年度の事業報告  
•    監査役(社外)の選任および報酬について 
•    配当について 
特別決議事項: 以下の事項は株主総会における75%以上の賛成多数の特別決議があって有効な採決になります。
•    基本定款の内容変更  
•    付属定款の内容変更
•    増資 
•    減資  
•    会社の解散 
•    他社との新設合併 

 

特別決議のための手続: 前述の通り、有効な特別決議を採決するための条件は以下の通りになります。ただし、会社の付属定款に特段の条件が設けられている場合(例:普通株の株主の全員の賛成が必要である)当該条件も満たさなければなりません 。
•    株主総会の招集通知を株主総会開催日の少なくとも14日前に地元の新聞一部の紙面上に少なくとも1回公告すること 。
•    株主総会の招集通知を郵便で全株主に郵送すること。
•    招集通知には決議内容が明記されていること。 
•    出席している株主の議決権の合計の75%相当以上の賛成多数があること 。


挙手vs.投票: 株主総会における決議方法は「挙手」(Show of hands) 又は「投票」(Poll) があります。挙手による場合、1株主はその株式保有数に関わらす1議決権しかありません 。一方、投票による場合は保有する株式数に付与されている決議権の合計の議決権があります。(例えば、投票による決議をする場合、普通株式2株を保有する場合、2議決権を有する。あるいは、各株に半分の議決権しか無い優先株式2株を保有する場合、1議決権を有することとなります。)原則的に、決議は挙手によるものであり、投票制にするためには付属定款にその旨を記載するか 、付属定款がこの点について何も明記されていない場合、挙手の結果が発表される前、またはその途中において、少なくとも二人の株主による投票制の要求が必要となります。 


決定票 (Casting Vote): 挙手制、投票制に関わらず、賛否の数が同等の場合、議長は決定票を投じることができます 。つまり、議長は例え株主でなくとも1議決権を有する場合があります。


株主総会議事録の登記: 株主総会議事録は商務省へ登記する必要はありません。


配当
原則的に配当決議は株主総会でなされるものですが 、取締役会も会社に利益があり配当をすることが正当化できると考えた場合、期中配当を支払うこともできます 。配当は利益からしかしてはなりません 。損失がある場合、それが抹消されるまで配当をしてはなりません 。また、配当をするに当たり、利益の5%に相当する法定準備金を、登録資本の10%相当に達するまで留保する必要があります。 

 

株主名簿
全ての有限会社は株主名簿を保管する義務があり 、取締役会はこれをアップデートする責任を負います 。また、株主名簿の記載事項は正しいと推定されます 。取締役会は年に一回AGM後14日以内にAGM当日の株主、及び株主ではなくなった者の詳細を商務省登記する義務があります 。

 

法定監査
全ての有限会社は12ヶ月間に少なくとも一回 、会計年度末の財務諸表を作成する必要があります。会計年度末から4ヶ月以内 に公認会計士より監査済みの財務諸表を株主総会による承認のために提出されなければなりません。同承認後、取締役会は1ヶ月以内にその監査済み財務諸表を商務省に登記する義務もあります 。その後、当該財務諸表の内容は公開情報となります。

 

税務
有限会社は法人税の対象となります。有限会社は単体でそれぞれ課税対象となり、連結納税の制度はありません。原則的に法人税は毎年課税対象純利益に法人税率を乗じて算出されます。ただし、例外的に、国際運輸業や会計の記録が無い場合、総所得に対し課税される場合があります。

 

 

 
 


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