移転価格税制|タイ
タイにおける移転価格税制に係る文書化義務等に関するあらまし、
及び当事務所の関連業務のご案内
タイにおける文書化義務等
2019年1月1日以降に開始した会計年度より、(ア)2億バーツ以上の年間売上高を有し、かつ(イ)関連者を有するタイの法人税申告・納税義務者(以下、「会社」)は、関連者間取引の有無に関わらず、関連者に関する情報を歳入局が指定する様式(「関連者開示報告書式」)を法人税申告書と併せて提出する義務が生じています。(歳入法典、第71条の三、第一項)
これに加え、上記の(ア)及び(イ)の条件を満たす法人は、関連者開示報告様式の提出から5年の間に歳入局の税務担当官より、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(以下、「移転価格文書」)を要求された場合、60日以内に移転価格文書を歳入局に提出する義務があります。(歳入法典、第71条の三、第二項)
当該提出義務に違反した場合、20万バーツ以下の罰金が科せられ(歳入法典、第35条の三)、移転価格に関する調査を受ける可能性が増大されることとなります。
上記のルールは、2018年11月21日に官報に掲載された歳入法典改正法(第47号)に含まれているものです。しかしながら、従来からあった税法上の規定により、上記の(ア)及び(イ)に該当しない会社でも市場価格から乖離した取引に対し、税務上の調整をする税法上の根拠は存在していました。これは、タイ国内取引、非関連者間取引等と言った一般的に移転価格税制の範囲外の取引も移転価格税制的な税務上の調整の対象に、税法上、なり得ることを意味します。
従来から存在していた税法上の規定とは、歳入法典第65条の二の(4)(売上が市場価格より低かった場合、上方修正をすることを可能にする条文)、及び歳入法典第65条の三の(15)(合理的な範囲を超える費用または取得価格があった場合、当該超過部分に対し損金不算入とすることを可能にする条文)等が挙げられます。
従い、2億バーツ以上の売り上げの有無に関わらず関連会社間取引を有する会社は、税務調整リスクを軽減するために、適正な価格で取引をしていたこと、または適正な利益率があったことを証明する文書類を準備・作成しておくことが勧められます。適正な利益率等が無い場合、関連会社間取引価格を将来的にどのように調整すべきか、または税務調整を受けた場合、その調整の範囲を制限するための根拠資料として、移転価格文書を利用することも考えられます。
歳入局の移転価格を担当する法務部門の担当官と非公式に話をした際、現在、歳入局は、一般的に、BEPSプロジェクトで言う「ローカルファイル」またはそれに同等なものしか求めていないとこ事でした。一方、「カントリー バイ カントリー レポート(CbC)」を要求するかは、税務当局がパブリックコメントの受領をしていたことから、現在検討中であると見受けられます。また、「マスターファイル」は、まだ特殊な事情が無い限り、今の所、不要だと理解されます。
国際的な実務としてローカルファイルに含まれるべき項目・情報は以下の通りになります。{Source: OECDの報告書、Annex II to Chapter V of OECD/G20 Base Erosion and Profit Shifting Project - Transfer Pricing Documentation and Country-by-Country Reporting (Action 13: 2015 Final Report)}
ローカルファイル必須情報
ローカル事業体(現地法人)に関する情報
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現地法人の経営構造、組織図、及び現地法人の責任者の報告先となる者、及び当該被報告者が主とする事務所の所在国に関する説明。
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当年度又は直近の年度において現地法人の関与または影響のあった事業再編や無形資産譲渡に 関する説明、対象事業体に影響を与えた取引の説明を含む、対象事業体の事業と事業戦略の詳細な 説明。
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主要な競合先。
関連者間取引 情報
現地法人が関与する重大な関連者間取引カテゴリーごとに、以下の情報を提出する。
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各関連者間の重要な取引(製造に関する役務の調達、商品購入、役務提供、ローン、資金調達及び契 約履行保証、無形資産ライセンス等)と取引背景の説明。
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現地法人が関与する関連者間取引カテゴリーごとに、関連者間支払い及び受取り額(製品、サービ ス、ロイヤルティ、金利等の支払い及び受取り、国外の支払い者または受取り者の納税地ごとに記 載)。
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関連者間取引カテゴリーごとの関連者間取引に係る関連者の特定と、関連者間の関係。
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現地法人により締結された全ての重要な関連者間契約書のコピー。
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文書化された関連者間取引価格カテゴリーごとの納税者及び関連者の詳細な比較可能性及び機能分 析、前年との比較を含めた記載。
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取引カテゴリーごとの最適な移転価格算定手法及びその算定手法を選択した理由の説明。
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該当する場合、どの関連者を検証対象企業としたかの明示及びその理由の説明。
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移転価格算定手法を適用するに当たっての重要な前提条件の要約。
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該当する場合、複数年度検証を行う理由の説明。
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もしあれば、選定された比較対象取引(外部又は内部)の一覧と説明。移転価格分析において依拠する独立企業の関連財務指標情報(比較対象取引の選定方法及び情報源に関する説明を含む)。
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差異調整の説明、差異調整の実施対象(検証対象企業か比較対象取引かあるいはその両方か)の明示。
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選定された移転価格算定手法の適用に基づき、関連者間取引が独立企業原則に則り価格付けされたと結論付ける理由の説明。
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移転価格算定手法の適用に当たって利用された財務諸表のサマリー。
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対象税務管轄地が参加国していないが、上記の関連者間取引に関連する既存のユニ及びバイ/マルチ APA 、及びその他の税務ルーリングのコピー。
財務情報
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現地法人の対象年度の財務諸表。監査済財務諸表を添付。無い場合、未監査の財務諸表を提供。
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移転価格算定手法の適用に当たって使用した財務情報と年次財務諸表との関係をつなげる情報、及び配賦表。
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分析に使用した比較対象データの関連財務データのサマリー、及びその情報源。
サービス内容、及びご料金
私共は、上記のローカルファイルに含まれるべき情報を網羅した移転価格文書の作成(原則的に英語)を致しております。作成料は、貴社の事業内容、取引フロー等を把握させて頂いた上で個別にお見積りを出させて頂きますが、一般的に約250,000バーツとさせて頂いております。事業部門・事業ラインが複数あり、複数のベンチマークスタディーが必要な場合、二つ目以降の事業ライン毎に100,000バーツの追加とさせて頂いております。当該業務を遂行するために別会社(Business Online Public Company Limited)社に対し、タイのベンチマークデータを検索するための検索サービス料(約 55,000バーツ)を私共は支払う必要がありますが、当該料金は私共のサービス料で賄います。(当社負担とさせて頂きます。)しかし、その他実費(交通費等)及びVAT(7%)は別途のご請求とさせて頂いております。